嫁に来ないか

ミニコミ雑誌「嫁に来ないか」の編集長のブログです。

小説「ボッカとロッカ」毎朝7時更新!

2/12

あれから私は一枚の布も買えていなかった。
勇気がなかった。

もちろん布の種類と機能をまったく把握できていないのもあるが、いいなと思う布を手にしても、はたして、これを買って、ステキなかんじに仕上がるのだろうか、想像がつかなかった。また、その布が高いのか安いのかもよくわからなかった。
ふと、IKEAならそこそこ布も安いのでは?デザインもおもしろいものがあるのでは?と思い立ち、同じく幼稚園入園を春に控えて頭を抱えている友人と、子連れでIKEAの立川店で落ち合うことになった。

湘南から立川は遠い。途中、高速道路からいつも行っている港北IKEAが見えた時は、自分の行動に疑問を感じそうになったが、今日はあくまでも、友人に会って相談しながら布を購入するのが目的なのだ。
先日購入した指南書をざっとみるにつけ、とにかく1m買えば、1種類はまかなえるようだった。あまり細かいことは考えず、とにかく今日は、いいなと思った布を1mずつ買ってみよう、とだけ決めていた。

店内でかくれんぼなどをしながら仲良く遊ぶ子どもらを横目で追いつつ、しかし、子連れで友人とおしゃべりしながら歩くIKEAのなんと楽しいことか。そもそも女友達とゆっくり歩きながらショッピングを楽しむこと自体が久しぶりすぎる。子連れなら皆無だ。毎週でもこんな風に会いたいが、いかんせん、立川が遠い。

布のコーナーで、気に入った大柄の、張りのある布を手にしていると、友人に「その柄、横で使えばバッグに良さそうだし、縦でエプロンでもいいね!」と後押ししてもらった。次に手にした、ピンクと灰色の太いストライプ、でもあまりになんてことない柄なのでどうしようかと考えあぐねていると、友人に「かわいいよ、それ」と言ってもらえる。そうだよね、かわいいもんね。なんてことないんだけど、かわいいよね。そうだ。私は誰かとこんな会話がしたかったのだ。かわいいものを見て、こんなふうに使える、あんな風にできる、と、展開のある会話をしたかったのだ。それで、かわいいよねっていううれしい気持ちが盛り上がって、喜ぶかなってプレゼントみたいな気持ちで娘の物を買いたかったのだ、不安いっぱいで眉寄せてレジに並ぶのではなく。じーんときた。立川まで来てほんとうに良かった。高速使っても2時間以上かかったけど、来てよかった。娘たちもソフトクリームを買ってもらえてご満悦だ。

結局、その2点を1mずつ、目的もとくに決めずに購入した。
こんなに大量に布を買うのははじめてだ。
なのに、まだ全然足りないだなんて。

ミシンも未だ、箱を開けていない。


イケア・ジャパン 株式会社 - IKEA