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嫁に来ないか

ミニコミ雑誌「嫁に来ないか」の編集長のブログです。2015年おはぎ号(無料!) noteにて発売中!

3/11

はじめてのミシン日記_幼稚園入園準備編

ミシンの講習会に参加。と、言っても、マンツーマン、生徒は一度に2人までで、私の他には、美人が一人いるだけだ。彼女もやはり入園入学グッズ製作のようで、小学校の防災頭巾カバーを作りに来ていた。
我々の時代、防災頭巾カバーといえば、座布団にするものだったが、今は椅子の背のクッションのようにとりつける物もポピュラーらしい。彼女はその背につけるバージョンをキルトで作成していた。

私はというと、まず時間を30分間違えて15分遅刻すると連絡して結局15分前に来たことになったという頓珍漢。そして、遅刻だと思っていたので慌てて出たために、時間はたっぷりあるのに忘れ物が多いという泣きたい状況に。作るものはスモック。指南書を先生に渡すと、ああ、袖を作らなくて良いタイプなのね、と頷かれる。
まず、忘れてきたハトロン紙をその場で購入し、型紙を写し取る。その時に、広げた紙の上にドアストッパーのようなものを2つ置かれた。なるほど、どの指南書にだか忘れたが、用意すると良いものリストの中に「重し」というのがあった。重しを紙の上に滑らせて行くだけで良いので、待ち針で止めるより格段に作業が早くなる。と、私が布目を示す矢印を適当にフリーハンドでひいたところで、「その線は布目を見る線ですから重要なのできちんと定規をあてて書きましょう」と教わる。私はただ、方位磁石的な感じでわかれば良いのだと思っていたが、違うらしい。書き直しながら、やっぱり一度教わるというのは違うなぁ、着付けもそうだものなぁ、と、また頭の中で着付けと比較をしていた。着付けは自己流でもやれないことはないけれど、習うと格段に着崩れにくくなるし、きれいになる。角がきちんと合わさった折り紙といった具合に。

ハトロン紙を切り取って、布を広げる。スモックは、絵の具など、もう大幅に汚れるときに使うものだから、1m300円程度のセールのドット柄だ。先生たちが「ポケットだけ色を替えてもかわいいわね」とわいわい言い出す。たしかに。端切れもたくさん売っていたのでピンクのドット柄に合わせて、黄色のチェックを選んだ。あらかじめ準備があれば、ポケットもドットを探したかったが仕方がない。し、どうせ絵の具でどんな柄でも関係なくなる。
私が布を選んでいる間に、型紙を布に待ち針で止めてくれた先生が、では布を裁断しましょう、と、ピザを切る道具のような、丸い刃のついたものを手渡してきた。
「ロータリーカッターははじめて?」先生に聞かれて頷くと、手を切らないようにと注意した上で、端切れで練習をさせてくれた。「これを使うと、二枚重ねた布がずれずに切れるのよ」使用して、確かに!と思った。はさみよりも早い。これも指南書に書いてあったが、今後どのくらい裁縫をするかわからないのに道具ばかり増やしても…(カッターマットも買わなくてはならないし…)とスルーしたのだったが、これは買っても良かったかもな…という快適さだった。とくに、はさみで切るとどうしても曲がってしまう私にとっては。

その間指南書を読んでいた先生に「バイアステープはもってきた?」と聞かれ、あ!買ってきてない…です…と小さくなった。もういや、私。先生は、裁断した余布を手に取って、じゃ、これで作っちゃいますね、と、びゃびゃっと定規を当て始めた。共布のバイアステープだなんて…忘れ物をして、得をしてしまった。

エプロン同様、まずは前見頃にポケットをふたつ取り付ける作業。角の丸いポケットは難しい。おまけに教室にある業務用アイロンは、工場感抜群、古びた鋳型で小さいところがまた恐ろしく、つねに高温だ。そんなプロ使用のアイロン台につながれたアイロンを怖々つかみ、小さなポケットの角の丸みの縫い代を押さえていく。もうすぐにやけどしそうでなかなか跡がつけられない。結局、「これじゃ、取れちゃうから」とやり直しにもなったわりに、左右のポケットの丸みは若干違う角度で仕上がった。

前見頃と後ろ身頃を縫い合わせ、脇のところは指南書には切り込みを入れるよう書いてあったが、「切れるのが怖いし、この程度なら伸ばしちゃましょ」と先生がアイロンをあてて伸ばしてくれて(そんなことができるんだ!)、そして、初めて私はロックミシンの前に座った。

ロックミシンというのが、結局なにができるものなのか、私は今も、いまひとつ把握できていない。
とにかく私がその日体験したのは、布の端を切ると同時にまつってほつれないようにする、という役割のロックミシンだった(たぶん、それが、ポピュラーな使い方だと思うのだが)。つまり、ロックミシンとは、ミシンに、布を切る刃があるのだ。なんて恐ろしいミシンだ。
眠りの森の美女でおなじみの糸巻きのような糸の束が4つ刺さっているうち、ひとつを取り除いて(なぜなのかは説明されたけれど覚えていない)、「ポイントは」と、先生の指は刃に触れた。「縫うよりも先に布が切られる、ということです」
つまり、いきなり切ることから入るので、布を当てる位置を慎重にするようにということだった。失敗の見本のような失敗を重ねてきた私からすれば、全く自信がない作業だった。「じゃあこの位置でいきましょうか」と先生が布を当てて、慎重にミシンを踏み始めたところで、教室に電話がかかってきた。先生は電話を取る。そして、あろうことか、この失敗の見本市の私を残し、子機で会話をしながらそのままどこかに行ってしまったのだ!ミシンは走っている(私が走らせている)。もうすぐカーブにさしかかる。止めるべきか。時計を見る。ああ、もうこんな時間!?もうすぐ教室が終る。ロックミシンのかけかけなんてどうにもならなすぎる。私は進んだ。慎重に、慎重に。細い路地、トラックとすれ違わなくてはならなくなった時の車の運転のように。こめかみに動悸を感じる。先生が戻ってきたがまだ電話中だ。美人についている先生が私の様子を首を伸ばして気にしている。たぶん私が甲虫のように丸まって作業をしているせいだろう。うう…ザムザ…と唸りながら、とうとう私は、脇部分の全て、ロックミシンをかけ終わった。胃痛がする。タイミングよく先生がお詫びの言葉と共に現れた。私はやり遂げた。そしてこの日の教室が終了した。次の予約について聞かれたが、明後日裁縫が得意な友人に手伝ってもらうことを伝えると、この後の作業はバイアステープを首と袖口に取り付けてゴムを通して終わりだと教わった。ポケットにあんなに時間をかけなければ、いや、型紙をハトロン紙に写したものを持ってきていれば、時間内に収まったはずなのに。少し悔しいが、それよりどっと疲れが出て、夜には筋肉痛も出始めたのだった。